ゴールにふさわしくない?

私たちのコーチングではゴールは本人の心から望むことであり、現状の外に設定するもの、とされています。

では上の条件に合致するものはすべてゴールにふさわしいものなのでしょうか?

 

年収を今の100倍にする。

経営者(社長)になる。

プロのミュージシャンになる。

上場企業に就職する。

自分の会社を日本一の企業に育てる。

プロの俳優になる。

などなど。

 

これらの目標は人によっては上記の二つの条件に合致しています。

年収300万円の人が年収3億円を目標にすることは現状の外といえるでしょう。

新入社員や大学生が経営者を目指すこともそうですね。

現状の外です。

ところが上記の目標またはゴールは私たちコーチはゴールとしてお勧めすることはありません。

なぜでしょう?

 

ゴールを達成するためにはゴールを達成したセルフイメージを描き、その臨場感を上げることが必要です。

そのセルフイメージを年収3億円にしたらどうなるでしょうか?

具体的にセルフイメージを描こうとしてみてください。

ゴールの世界で何をしてどのようにふるまい、どう感じているのか鮮明なイメージを描く必要があります。

この場合、大金を手にして贅沢をしているイメージなら描きやすいですが、それ以外のイメージを描くことは少し難しいと思います。

 

バリバリと仕事をしてその結果年収が増える、というイメージなら描きやすいと思います。

ですから、お金持ちになりたいという気持ちはとても素晴らしいことなのですが、お金そのものをゴールに設定するよりも世の中に何らかの価値を提供する事業や仕事をしているセルフイメージを描くほうがマインドに働きかけやすいのです。

またお金儲けをゴールにすると自分自身がやりたいことより儲かりそうな仕事に目が行き、結果ゴールがwant to ではなく have to (しなければならない)にすり替わってしまう恐れもあります。

お金がwant to であってもそのお金を稼ぐ方法が have to になってしまうと本末転倒ですよね。

 

また、職業そのものや地位、肩書などもゴールにふさわしくありません。

やや極端な例ですが、会社を設立しさえすれば誰でも社長になれます。

これでは現状の外ではなくなってしまいます。

またお金の例でもお話ししたことがこの場合にもあてはまります。

地位や肩書をゴールにするとhave to になりやすいのです。

 

職業もそうです。

プロのミュージシャンといっても様々です。

路上ライブをするしかない人でもプロのミュージシャンということができますから、プロミュージシャンになるというゴールは現状の外とは言えないのです。

職業をゴールにする場合は何らかの形容詞をつけることでゴールにすることができます。

一流のミュージシャンになる、というのはゴールになりえるということです。

 

自分の会社を日本一の企業に育てる、というのはゴールになりえます。

ただ、私なら日本一の中身についてもう少しお考えいただくように促します。

売り上げ規模なのか、株式の時価総額なのか、社員数なのか、顧客満足度なのかあいまいですからね。

それと抽象度が高いのか低いのかもこのゴールだけではわかりません。

日本一のイメージの中にどのようなヴィジョンが含まれているのかが重要になってくると思います。

 

アスリートの場合でも同様にゴールにふさわしくないものがあります。

オリンピック中継を見ていて感じたのですが、報道機関はメダルの色や数にやたらとこだわっているような印象を受けました。

応援する側にとっては重要かもしれません。

しかし、本来メダルの色や数に代表される順位はアスリート自身がコントロールすることが極めて難しいものです。

出場する大会のレベルが極端に低く、アスリートのレベルが逆に非常に高ければ高順位を狙えるでしょうが、そんなことをすればエフィカシーが下がるだけです。

 

やはり、オリンピックに代表されるようなトップアスリートが集う大会でよいパフォーマンスを発揮して上位入賞を狙うのが普通です。

 

アスリートに限らず、何らかのコンクールやコンテストに参加する方は上位入賞をゴールに設定することが多いと思います。

ただ順位をゴールにすると、「したい、やりたい」という気持ちより「やらなければ、さもないと~」といった義務感が強くなる傾向があります。

その傾向が強まれば義務感は不安や恐怖に変化し、その結果パフォーマンスの向上は望めないか、限定的なものになるでしょう。

 

一流のトップアスリートになる、というゴールならhave to の入り込む余地は少ないのですが、優勝するというゴールは余分な緊張やストレスを生み逆効果になる可能性が高まります。

実力が発揮できなくなるのですね。

 

ここで少し視点を変えてみましょう。

2020年の東京オリンピックでの金メダル獲得目標は25個だそうです。

ネットで見た情報なので不確かですが、ゴールについて考えるには十分なネタです。

 

この金メダル獲得数の目標は誰の目標なのでしょうか。

おそらく国または日本オリンピック委員会の目標なのでしょう。

ですから、これを達成するのはアスリートではなく、国または日本オリンピック委員会、ということになります。

 

経済学では国のGDP(国内総生産)と金メダルの獲得数の間に強い相関関係があることが分かっています。

ですから、このゴールを達成するためにはそれにふさわしいGDPを国が達成することが必要です。

このことはアスリート個人とは関係がありません。

国がGDPを現在の500兆円から600兆円に成長させることで金メダルの獲得数が増える可能性が高まるのはスポーツとそれにかかわる産業やインフラなどの環境整備により大きな予算を振り向けられるからです。

国や日本オリンピック委員会のゴールをアスリート個人のゴールと混同すると、プレッシャーでかえって逆効果になります。

メダルの色や数はアスリートのゴールにはあまりふさわしくないと思います。

 

また報道機関はオリンピックの祭典を盛大に盛り上げ、ドラマチックに報道します。

これは報道機関のゴールです。

視聴率競争に勝ち抜く、というゴールですね。

ですからできるだけメダルの色や数にこだわり、視聴者をあおります。

 

この影響をアスリート個人が受けるとどのような結果になるか、お分かりいただけると思います。

好きで始めた競技の晴れ舞台が、ただ苦しいものになってしまいます。

 

オリンピックを観戦していてゴールについていろいろ考えさせられました。

ゴールは外部から押し付けると単なるノルマになってしまいます。

また、自分自身のゴールとほかの人や組織のゴールと混同してしまうことを避ける必要があります。

ここではコーポレートコーチングにおける組織のゴール設定が参考になるでしょう。

国が参加者すべてのゴールを包摂する高い抽象度のゴールを設定することです。

 

個人であれ、組織であれゴールを適切に設定できれば、ハイパフォーマンスが期待できます。

それはスポーツに限りません。

適切なゴール設定が私たちの人生を輝かせます。

 

 

 

※ゴール設定はコーチングの主眼ですから、まだまだ書き足りないことや漏れていることがあるかと思います。

今後も様々な角度からゴール設定についてお話してまいります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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