放出

大阪に「放出」という地名があります。

何と読むか、ご存知ですか?

大阪の方でなければ、多分読めないと思います。

何しろ、難読地名の代表的な存在ですから。

「放出」と書いて、「はなてん」と読みます。

どうやったら、「放出」を「はなてん」と読めるのか、由来があります。

江戸時代は「放出」を、はなちで、はなちでん、はなって、等々と呼んでいた記録があるそうで、近代に訛って、はなてんと読むようになったそうです。

その由来の一つは、古代、この辺りは河内湖と呼ばれる湖のほとりで、川の水が湖に放たれていたので、はなちでと呼んだというもの。

もう一つは、668年天智天皇の御代、新羅の僧道行が尾張国熱田神宮に鎮まる神剣天叢雲の剣(草薙の剣)を盗み出し、本国への帰途、難波の津で大嵐に遭い、当時の大和川の川口であった当地まで流され、嵐は更に激しくなり、これは神罰と恐れをなして剣を河中に放り出して逃げ去った、という伝承。

こちらの説の方が有力だと思います。

というのも、放出には「阿遅速雄(あじはやお)神社」という神社が鎮座し、社伝として上の説を伝えているからです。

この阿遅速雄神社、御祭神はアジスキタカヒコネの命と八剣大神で、アジスキタカヒコネは八咫烏と呼ばれた神様です。

八剣大神は草薙剣など神剣を神様としてお祭りされたとされていますが、その本体は素戔嗚尊。

素戔嗚は八岐大蛇退治の際に、天叢雲の剣(草薙剣)を手に入れた神様として、有名ですね。

しかもアジスキタカヒコネの祖父でもあるのです。

草薙剣を盗み出そうとして、神罰を被り恐れ、剣を放り出したがゆえに、はなちでという地名になったという説ですね。

ちなみに草薙剣は無事に、熱田神宮に元どおり鎮まっておられるそうです。

めでたし、めでたし。

地名というのは、土地の古い記憶からつけられる場合も多く、土地の歴史を調べると意外な伝承に出会うことも多いのです。

こういった伝承は、ある意味その土地に住む人々の共通の記憶=beliefs system であり、地名はその記憶と結びついたトリガー(引き金)のような役割を持っているのかもしれません。

地名という言葉から、往古の記憶(イメージやら情動など)が引き出されたりするのですから。

こういったことを考えると、安易に地名を変更するのには賛成できません。

由来が古い地名ほど、失われるかもしれない土地の記憶が込められているからです。

個人の場合、ネガティブな情動記憶は忘れてしまうのが一番ですが、地名の場合、それが失われると、歴史が失われる恐れもあります。

また時の権力者が、地名を変えることで自分の都合の良い歴史に書き換えた例(藤原不比等など)もあったのです。

地名が変わると、個人がセルフトークを変えるのと同じような効果があるというのは、留意したいポイントだと思います。

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